防災WEST

慰霊碑-交通安全地蔵-(三股町勝岡)

自然災害伝承碑

 梅雨前線に伴う集中豪雨は、毎年のように九州を中心に大きな被害をもたらします。

 今から50年以上前の1969(昭和44)年においても、活発化した梅雨前線により、特に九州南部で記録的な雨量となりました。6月28日から7月11日までに、宮崎県えびの高原では総雨量2,044mmを観測し、6月29日の日雨量は、512mmを記録(宮崎地方気象台, 1983)。

 このため、6月30日、宮崎県南西部に位置する三股町では、通行中の女子中学生4名が幅約30m・高さ約10mのシラス層の法面崩壊により犠牲となりました。こちらがその災害現場(Google map)。 左側には慰霊碑が建立されています。

 想像していたよりも法面の傾斜が緩く感じたのは、災害後に復旧工事が施されたためであり、その経緯については当時の町広報誌に載っています。ここ勝岡新坂は、シラスと粘土の混合した特殊土壌のため、慎重に工事施工が行われたようです。

 工法は、はげしかった両面傾斜を思いきって切りくずし、ゆるやかな四十五度の傾斜になし、土台は、内部を強固なコンクリートで固めた建築ブロックとし、二段目は鉄筋コンクリートくいを打こみ更にコンクリートでしめ、最上部は、張芝とした三段階になっております。最も重要な排水処置も完全にほどこされます。

出典:三股町「広報みまた 昭和44年11月号(Vol.70)」

 この豪雨では、雨量と被害は必ずしも比例せず、記録的な雨量となったえびの市よりも三股町で被害が発生しています。(この時、都城では、3日間(28~30日)で362mmの降水量を観測。)

 その理由は前述した「特殊土壌」のためだと考えられます。特殊土壌とは、シラス、ボラ、コラ、赤ホヤ等の火山噴出物や花崗岩風化土、その他ヨナ、富士マサが該当し、浸食を受けやすい性状の土壌のことです。宮崎県全域が特殊土壌地帯に指定されています(農林水産省)。※特殊土壌地帯:しばしば台風の来襲を受け雨量が極めて多く、かつ特殊土壌(シラス等特殊な火山噴出物等)に覆われているために、災害が発生しやすく農業生産力が低い地帯を国土交通大臣、総務大臣及び農林水産大臣が指定。

 日々の天気予報に加えて、気候や地形、土地の状態等、私達が住む地域がどんな場所であるかを知ることは、災害時に自分や家族の命を守ることに繋がると実感しました。

 最後に、三股町のハザードマップでは、新坂の両法面は「急傾斜地の崩壊」の危険性があることが示されています。また、見守ってくださるお地蔵さんは国土地理院の自然災害伝承碑にも登録されています。尊い犠牲を二度と繰り返さないために、私達ができることを考えていきましょう。

画像中心にある地図記号は自然災害伝承碑を示す(出典:ハザードマップポータルサイト)

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